Kathy’s blog

自分が欲しいものを3Dプリント等で作っていきます

3Dスキャンでミリタリーフィギュアを作る (その1)

初投稿で拙い文章, 写真ですがどうぞよろしくお願いします。

はじめに

近年, プラモメーカー各社で3Dスキャンによるフィギュアが台頭しており, また3Dプリ

ンタの普及もあり個人で3Dスキャンによるレジンフィギュアキットの製作, 販売をされている方々もおられます。

フィギュアを自作できれば, ジオラマヴィネットの表現の幅が広がることでしょう。

市販の1/35フィギュアは米兵やドイツ兵が大半で, 他の国は複数種類を集めること自体が難しいですね。英仏伊や国民党軍兵士なんてほとんど見かけませんし(自分が探してないだけかもしれませんが), 日本兵もやはり少ないですね。また, 国別だけでなく兵科においても差は顕著です。歩兵や戦車兵(AFVモデルの花形は戦車ですからね), 砲兵が中心で, 騎兵や輜重兵その他兵科は稀です。

これらは単純に需要がないからですね。日本陸軍輜重輸卒セットなんてインジェクションキットを製品化したところで金型費用は回収できませんから…。

筆者もフィギュアの工面には苦労してきました。タミヤ日本陸軍歩兵セットをいくつも買っては切り貼りしたり…。あのキットは顔の彫が深くて模型映えするので大好きなのですが, やはり物足りなくなります。幸い数年前に将校セットが出ましたが, 些か背が高いかなと(実寸換算すると180数センチ)。それでも同社の古いキットよりは小ぶりですが。

やはり自分の欲しいフィギュアを作りたい...(ポーズ, 年代や季節, 階級, 兵科に沿った装備)

Blenderなどの3Dモデリングソフトを勉強してゼロからモデルを作ろうともしましたが, InventorやCATIAとは勝手が違うため全く身につかず…

そこで, 3Dスキャンで基本となるモデルを生成し, Blenderで微修正する手法をとることに。

 

1. 3Dスキャン

3Dスキャナーは筆者が所属する研究室でRevopoint社のPOPというスキャナーを所有していたため, 使用した経験がありました。現在は後継のPOP2やPOP miniが出ています。

・Revopoint社HP

www.revopoint3d.jp

 

amazon販売ページ:Revopoint POP2

amzn.asia

 

昨年度筆者が修士課程を修了する際, 卒業生からの記念品として, 卒業生のスキャンフィギュアを指導教員へ送るというアイディアが出ました。歴代卒業生フィギュアコレクションが教授室に並ぶのを想像するとなんだかシュールです。しかし, 残念ながらそれは叶いませんでした。理由はPOPのスキャン範囲によるものだと考えました。

この3Dスキャナーでは取得した点群から特徴点を検出して, 前のフレームの点群の特徴点と一致するように合成します。これを繰り返すことでスキャン対象全体の表面の点群データを取得しています。しかしながらスキャン範囲が小さい場合, スキャナーの移動や手振れの影響で特徴点を見失いやすく, きれいにスキャンすることが難しくなります。

足が4本の化け物誕生

加えて, 赤外線3Dスキャナーでは黒いものが苦手で, 透明や鏡面のものはスキャンできないようです。塗装したりベビーパウダー等をまぶしたりで対処できるらしいですが, まだ試していません。

他にも写真から3Dモデルを作成するソフトもいくつか試してみましたがどれも上手くいかず…, しかし諦めたらそこで試合終了らしいのでスキャン範囲の大きなスキャナーを探すことに。

 

2. Revopoint Range

丁度Revopointから新しいスキャナーが発表されていました。

・Revopoint Range

RANGE 3Dスキャナーwww.revopoint3d.jp

人や車といった大きなもののスキャン向けということで, スキャン範囲が従来の210 x 130[mm]から360 x 650[mm]へと拡大されています。さらにプレミアムセットでは耐荷重200[kg]のターンテーブルが付属します。

今年の4/28?までcampfireというクラウドファンディングサイトで先行販売がされていたので, 早速購入しました。サイトの手数料込みで12万円弱でした。

5月中旬に届きました。かなりデカいです。置き場と撮影場所を確保するために頑張って片づけました(現在はまた散らかってます)。大きいとはいえその大半は大型のターンテーブルです。

 

Range本体

Range本体

測距儀のような形をしていて, 同社の他のスキャナーより長いです。だいたい1/1000ヤマト2202ぐらいです。中央の四角い穴が赤外線ライトで左右のカメラで距離を測ります。向かって右側の小さい方のカメラがRGBセンサだと思います。

付属品

三脚, バッテリー, スマホホルダー, 背景用の黒シートとマーカーが付属しています。バッテリー及びスマホホルダーは三脚と結合可能です。それとターンテーブルです。

 

 スキャンのソフトウェアはRevo Scan 5で, RevopointのHPからダウンロードします。

PCだけでなくIOS/Android用のアプリも用意されており, スマホと接続してスキャン可能です。

スマホを使う場合, スマホホルダーに嵌めることで画面を見ながら片手でスキャンできるようです。(そのためのバッテリー)

ただし, 点群取得のスキャンfpsは下がるようです。(要検証)

 一方のノートPCでは最大fps出せるようですが, 右手にスキャナーを左手にノートPCを抱えなければならず, PC画面を確認しながらスキャナーを動かすのはなかなか難しいです。

筆者はスマホがホルダーに入らなかったのでノートPCと接続してスキャンしています。

今をときめくBalmudaフォンは中央部に厚みがあるので一般的なスマホホルダーには入りません(事業撤退もやむなし)

 

3. 3Dスキャンモデルの作成

 早速スキャンしてみました。装備を父親に着せターンテーブルの上に立たせてスキャン。今回は尉官外套を羽織った将校装備でいきます。(スキャン風景は撮影忘れてました)

頭から足元へ, ターンテーブルが一周するごとにスキャナーを下げながら撮影していきます。途中で腰が痛くなったので腰あたりで分割して後で合成しました。下は点群からサーフェスを生成したものです。

RGBセンサがついているので, データには色も含まれています。分割した箇所で色味が変わっていますが, 形状自体に影響はないです。

3Dスキャン -点群データ-

モデルの精度を高めるために, スキャン結果が怪しかった背嚢, 図嚢および編上靴を個別にスキャンして合成しました。

図嚢(特に側面), 背嚢(毛布), 編上靴(下側)

これらを合成したものを最終的なスキャンデータとしました。

スキャンデータ -最終-

残念ながら軍刀はうまくスキャンできませんでした。別撮りでも同様です。

細いからなのか表面が剥げて漆がむき出しだからなのか, 原因はよくわかっていません。

撮影範囲外だった頭頂部や黒くてスキャンできなかった後頭部など穴が開いている箇所があります。これらはRevo Scan 5の機能で自動的に埋めてもらえます。

メッシュ化したこのデータをobjファイルとして出力します。

Revo Scan 5から吐き出したデータをそのまま印刷することも可能ですが, 表面はかなり荒いため修正が必要です。

Revo Scan 5で作成したままのモデル

次に, Blenderでモデルの修正を行いました。

スキャンしたオリジナルのメッシュデータではメッシュのサイズがまちまちなので, リメッシュをかけます。

ボクセルサイズを設定して均一なサイズのメッシュを生成します。値が小さいほど精度は高いですが, あまり小さくしすぎるとフリーズします。

リメッシュしたらスカルプトモードで表面の平滑化, 形状のおかしな部分の修正やモールドの彫直しといった作業を行いました。特にゲートルはそのままだと塗装した際に埋まってしまいそうだったので彫を深くしています。

モールドの修正

モデルの修正が完了したら, stlファイルに出力してスライサーソフトにぶち込むのですが, その前に無くなっていた軍刀を持たせてあげます。

今回はCADソフトで適当に作って持たせました。

軍刀の追加

4. フィギュアの出力

モデルのstlファイルをスライサーソフトのchituboxで読み込み, サポートを付けていざ印刷です。プリンタはElegoo Mars 3 Pro, レジンはSK本舗製水洗いレジン肌色です。

・Elegoo Mars 3 Pro

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・SK本舗 水洗いレジン 肌色

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サポートから切り離して水洗いの後, 丸一日自然乾燥させます。

玄関で自然乾燥中の兵馬俑

洗浄, 乾燥後のモデルがこれ

印刷完了

手の形状など怪しいところもありますが, 顔はよく造形されています(写真では伝わらないと思いますが)。父親そっくりです。

息子の教育を誤ると軍装を着せられてフィギュア化されてしまいます。気を付けないといけませんね。

フィギュアの塗装は得意ではないのですが, ちゃんと塗装してみました。

なかなか良い感じ。

塗装後のフィギュア

1体作ってみて勝手がわかったので, 今後は立像ではなくて射撃姿勢なり匍匐なり作ってみたいですね。(飯盒で飯を頬張る兵とか)

今回は実物および複製品でスキャンして作りましたが, 装備を持ってなくてもそれらしい服装でスキャンして, 襟や物入れの形状の修正やCAD等で作った装備のデータを付ける等しても作ることができそうです。

ハ号と一緒に研究室に飾ってます